鍼治療は突発性難聴の治療法として、とても効果的と言われています。

今回は、鍼治療がどのように突発性難聴の回復を促すのかを、伝統的な東洋医学と現代解釈を基に詳しく説明していきます。

1. 鍼治療の基本理論

鍼治療は、体内の「気（生命エネルギー）」「血」「津液（血液以外の水分）」の乱れを整える事を目的とした治療法です。東洋医学では、体内の気、血、津液の流れが滞ると、病気が発生すると考えます。

そして、これらがスムーズに流れないと、内耳が酸素や栄養を十分に受け取れなくなり、突発性難聴が発生するとされます。

2. 突発性難聴の原因と鍼治療のアプローチ

突発性難聴は、内耳や聴神経の血流、津液の障害、あるいは免疫反応の異常により引き起こされると考えられています。

鍼治療はこれらの原因に対処することができます。

2.1. 気、血、津液の流れを改善する

東洋医学では、聴力が悪化する原因の一つとして「気、血、津液の滞り」が挙げられます。気や血、津液が滞ると、内耳や聴覚　神経に必要な栄養素や酸素が十分に供給されなくなったり、むくみなどが起こって聴神経が圧迫され、聴力障害を引き起こすとされます。鍼治療では、特定のツボを刺激することによって、気血津液の流れを改善し、血液やリンパ液の循環を促進することができます。

• 耳周辺のツボ: 鍼灸では耳周りにあるツボ（聴宮、耳門など）を刺激することで、内耳や聴覚神経に直接的な効果を与えます。
• 全身のツボ: 手や足にある特定のツボ（三陰交、合谷など）を刺激することで、全身の血流が改善され、内耳への血液供給が増加します。

2.2. 肝経と腎経の調整

東洋医学では、肝と腎が耳に密接に関連しているとされています。肝は「血」を蓄え、腎は「精」を補うとされ、これらの要素が不足すると聴力に悪影響を与える可能性があります。

• 肝の調整: 肝の機能が低下すると血液循環が悪くなり、耳への血流が不足し、突発性難聴が引き起こされることがあります。鍼治療によって肝の経絡を調整し、血液の流れを改善します。
• 腎の調整: 腎は聴力に関与しており、腎の「精」が不足すると聴力に影響を与えるとされています。腎の経絡を刺激する事で、耳の健康をサポートする事が出来ます。

2.3. 免疫機能の改善

突発性難聴の原因には、ウイルス感染や免疫系の異常が関与している場合もあります。鍼治療は、体の免疫系を調整する作用があり、免疫機能を向上させるため、ウイルス性や自己免疫的な原因による突発性難聴の回復を促す可能性があります。

• 免疫力向上: 鍼治療によって免疫系が活性化され、体内の防御機能が強化されると、難聴の原因となるウイルスや細菌に対する抵抗力が向上します。

3. 血流改善による聴力回復

突発性難聴の多くは、内耳や聴神経への血流不足とリンパ液の滞留が原因であると考えられています。鍼治療は、血流を促進し、リンパ液の流れを改善する効果がある為、聴力が回復します。

• 血液循環の改善: 鍼治療が血管を拡張させることで、内耳や聴神経への酸素や栄養の供給が改善され、聴力回復の促進に繋がります。

4. ストレス軽減と自律神経の調整

突発性難聴の原因には、ストレスや自律神経の乱れが影響する事が多いです。鍼治療は、ストレスを軽減し、自律神経を調整する効果があります。

• ストレス管理: 鍼治療は、副交感神経を刺激し、リラックス効果を促すため、ストレスや不安が原因で引き起こされた難聴の回復を助けることができます。

5. 臨床での鍼治療の実際

実際の鍼治療では、以下のようなアプローチが取られます。

• 耳周りのツボへの鍼: 直接、耳周りの筋肉を解し、血流やリンパの流れを良くする事が出来るので回復を促します。
• 全身のツボ: 体全体の乱れたバランスを整えて気、血、津液の流れを良くする事で体を正常な方向に導きます。

6. 鍼治療の効果とエビデンス

鍼治療は、突発性難聴に対して有効な治療法として利用されることが多く、さまざまな分野で研究も進んでいます。特に、血流改善や免疫機能の向上、ストレス管理といった効果が、治療の理論的根拠とされています。

結論

鍼治療は、突発性難聴に対して気、血、津液の流れの改善、血流やリンパ液の流れ促進、免疫機能の向上、ストレス管理を通じて回復を促します。

※効果には個人差があります